「沖田さん顔色悪いで,ちゃんとご飯食べて
「沖田さん顔色悪いで,ちゃんとご飯食べて。」
縁側でお茶をすすっていると我が子を心配するような顔でたえに言われてしまい,ちゃんと食べてる子供扱いしないでと笑った。
『ありゃ重症だな…。』【BOTOX 去皺針】2-7天消除動態紋 - Cutis
隊務に支障を出していないから土方は何も言わなかったけども,普通じゃない総司を見るに見兼ねた。
斎藤もまた同じだった。
『完全に俺のせいじゃないか…。』
自分の放った言葉が相当刺さったらしい。かと言って後は総司自身の気持ちの問題,どうこう出来る物でもない。
たえにしつこく心配される総司を見つめながら溜め息をついた。
『どう転ぶか分からないが仕方ねぇな…。』
土方はゆらりと静かに屯所を出た。
本当は自分の為だけに連れ出したかったが可愛い弟分のあんな姿をみたら放ってはおけない。
「ごめんください。」
店の暖簾をくぐるとぽかんとした三津と目が合った。
「土方さんがお一人で来るなんて珍しい!いらっしゃいませ!」
ぽかんとした顔はすぐに満開の笑顔を咲かせた。
「おう,じゃあ用件は分かるよな?」
三津の頭に手をかぶせてぐりぐりと大きく撫で回した。
「……へ?」
「へ?じゃねぇよ。口止め料貰いに来たぜ。」
耳元に顔を寄せて囁いた。
三津の顔から血の気が引いた。完全に油断していた。確かにただじゃ済まない男だとは知っているけどわざわざ本当に出向いて来るとは。
硬直して青ざめていると,土方は功助とトキの元へ行って何やら交渉を始めたではないか。
土方がとても小さな声で話すから三津には聞こえない。
「実は総司が体調を崩しまして…。お三津に看病を頼めないかと…。」
何せ男所帯だから細かな配慮が出来る奴がいないのだと嘆くように言った。
「あぁ,そう言う事なら。」
断る理由はない。
何を話してるの?と背伸びをして様子を窺う三津から見えたのは,うんうんと納得してどうぞどうぞと了承している二人。
『また勝手に話をつけて…。』
今度は一体どうなるのか戦々恐々と土方の背中を見つめた。
「では明日の夕餉までにはお返ししますので。」
「明日!?夕餉!?長くない!?」
一体どんな口止め料だと小さな体は震え上がった。
抵抗する間もなく詳細も伝えられないまま,三津はあれよあれよと連れ出された。
「ちょっとちょっと!どう言う事ですか?明日の夕餉までって!」
そんな長時間何をさせられるんだと思うと恐怖でしかない。
「だから俺の口止め料は高いっつったろ。」
文句は言わせないと目で脅された。うっとたじろぐも怯んではいられない。
「それならこっちだって条件があります!あの日会ったのを無かったことにする約束なんやからその事について何も聞かんとってくださいね!」
聞かれたって答えないからと強気に出た。
『いっちょ前に条件出して来やがった…。三津の癖に…。』
強気な目でじっと見つめられ舌打ちした。
「……明日の夕餉まで俺の小姓だ。」
土方はふんっと鼻を鳴らして歩き始めた。
「小姓…?」
それだけ?と首を傾げた。それぐらいなら簡単だ。
でも何で小姓なんだ?
「やっぱりおたえさん一人じゃ大変なんですか?でも何で女中じゃなくて小姓?」
三津は小走りで土方の隣に並んだ。するとすかさず拳骨が脳天に落ちてきた。
「三津の癖に俺の横に並ぶんじゃねぇよ。」
煩わしそうに横目で睨んだ。
理不尽に殴られて痛いし腹立たしいはずなのに,このやり取りが何だか懐かしい。三津は両手で頭を押さえながら,その懐かしさに少し口元を緩めた。
ずいずいと先を歩く土方だけど,以前に比べたら随分ゆっくりな気がする。ちゃんとついてこれる様に歩いてくれてる気がする。
丸くなったなぁと華奢な様に見えて威圧感のある背中に笑みを投げかけていたら,その背中がくるりと振り返った。
「何にやにやしてんだ気持ち悪い。」
物凄く嫌そうな顔で舌打ちをされた。
「気持ち悪いって酷い!」
やっぱり気がするだけで気のせいだった。口の悪さと性格の悪さは健在だった。